秋の涼しい風を待ちわびているこの頃です。もうすぐ空気も澄んで、月がより綺麗に見え始めますね。
とは言え昨日、夜道を歩いていたら、雲がリング状に開いて、その中から上弦の月がとても綺麗に立体的に輝いていました。まるで美味しそうなクロワッサンのようでした。
食欲の秋でもありますしね!
古今和歌集にも秋の歌が1番多いのですが、今回はその中から2首、ご紹介したいと思います。
小野小町
秋の夜も 名のみなりけり あふといへば 事ぞともなく あけぬるものを
『秋の夜長、というのも言葉だけのようです。いざ恋人に会えば何ということもなく夜は明けてしまいますから』
この歌はごもっともです、という感じ。
男性が女性宅に行くのは月明かりが灯し始める頃ですから、秋は早い時間帯から会えたんですね。
しかしながら秋は雨も多し。
雨の日は会いに行けない理由としては正当な理由です。
傘は雨傘としては一般的には使われていませんでしたし、衣が汚れて染色も落ちてしまいます。舗装されていない道、人目を避けた山道だったりもしますので雨が降っていては危険な道のりです。温かいお風呂に入るにも、お風呂に入れるのは占いで吉日の時だけ。
恵の雨も、色恋には天敵。
とは言え、雨を理由に会いに来ないとなれば ふてくされる女性がいるのは世の常?
(そんな歌もあります。いつかご紹介したいと思います)
逆に、そんな雨でもあなたに会いに来たよ、という男性の情熱的な歌もあります。
一つの不遇を生かすも殺すも、その人のセンスですね。何事も!
最後に、秋の夜長が長いか短いか、についてもう一首。
凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
ながしとも 思ひぞはてぬ 昔より 逢ふ人からの 秋のよなれば
『秋の夜は長いと、私は思いきっているわけではない。昔から、逢う相手によって長くもなり、短くもなるのが秋の夜です。』
1000年以上、それ以上に変わらない真理かもしれないですね。
ではまた。