陰暦で8月14日の今日。ということは
明日は年に一度の秋の十五夜ですね。
一年で最も美しい、とその昔から云われてきた月が浮かぶ夜です。
そして、それを明日に控える今宵は、明日の月を待つ『待宵』。
和歌では恋しい人を待ちわびる表現に用いられています。
月は憂いや儚さ、女性の陰の感情を表す時によく出てきますが
満ちて欠けてを繰り返すお月様も
推定45億才。
憂いや儚さを受け入れた先にある凛とした
ちょっとやそっとの事では動じない しなやかさと強さが
美しさを際立たせているように感じます。
そして本日ご紹介の和歌はこちら。
在原業平朝臣
植ゑしうゑば 秋なき時や咲かざらむ 花こそちらめ 根さへ枯れめや
心を込めて植えるから、秋なき時は咲かずとも、花は散れども、根までは決して枯れない
この歌は伊勢物語の中で恋歌として詠まれます。
想い人の庭に菊の花を植え、その花にこの歌をくくりつけるのです。
秋が来ない年はないので、つまりは毎年花が咲く。
花が散っても根は張っているので、来年もまた花は咲く。
そうしていつまでもあなたを想っている、忘れないでと伝えています。
物語の中にあって恋歌として詠まれる歌ですが、歌だけ取り出してしまえば
『心を込めて生きてきたこれまでだからちょっとやそっとのことがあっても大丈夫。』
とも詠めるこの歌。
45億才の月と、
これまでの自分を肯定する自分と
美味しいお団子とで、
少し達観してみたりしながら
一年で1番美しい月を見上げる夜も素敵ですね。